C8. 問いの力「行動を導く問い」

「気づき」を「変化」に変える力

コーチングの価値は、気づきの深さだけではなく、その気づきをどのように行動へとつなげるかにあります。「行動を導く問い」では、クライアントが自らの意志で一歩を踏み出すための行動デザインの問いを学びます。
ここでの目的は、コーチが「何をすべきか」を提案することではなく、クライアント自身が自分の選択で動ける状態を創り出すことです。この講座は、思考と行動の橋渡しをする「問い」を実践的に磨く時間です。

行動の本質は「意志」と「意味」

行動を促す前に大切なのは、「なぜその行動をしたいのか」を明確にすることです。人は意味のない行動を続けることはできません。行動の背後にある価値や目的を言語化することで、クライアントの内側からエネルギーが湧き上がります。
たとえば、
「それを実行することで、あなたは何を大切にできますか?」
「その行動の先に、どんな自分で在りたいですか?」
こうした問いは、行動を「義務」ではなく「選択」に変えます。
講座では、ICFコア・コンピテンシーC-8(行動の促進と成長支援)に基づき、クライアントの内発的動機づけを高める問いについて学びます。

行動を現実に落とし込む問い

行動を実際のステップに変えるには、具体性と柔軟性のバランスが重要です。
CBLアカデミーでは、行動設計のための3段階の問いを提示します。

1. 焦点を定める問い

「最初の一歩は、どんな小さな行動ですか?」
──大きな目標を具体的な行動単位に落とし込む。

2. 障害を見通す問い

「それを実行する上で、どんな壁が想定されますか?」
──現実的な課題を想定し、事前に準備する。

3. 支援を設計する問い

「あなたを支えてくれる人や仕組みはありますか?」
──環境とサポートを行動計画に組み込む。

これらの問いを通して、クライアントは「実現可能な行動計画」を自ら立てられるようになります。

行動を継続させるのは「感情」

行動の継続には、意志力よりも感情のエネルギーが重要です。
行動がうまく進まない背景には、恐れ・不安・羞恥などの感情が潜んでいることが多くあります。コーチの役割は、それらの感情を否定することではなく、安全に受けとめながら行動の意味を再構成することです。
たとえば、
「その不安の中に、どんな願いが隠れていますか?」
という問いを投げかけることで、感情が敵から味方に変わります。
感情と行動を統合する力が、プロフェッショナル・コーチの成熟を支えます。

行動を導く問いは、「未来を信じる」姿勢

行動を促す問いには、コーチの信念が映し出されます。
「あなたは変われる」と心から信じているコーチの問いには、自然と温度と強さが宿ります。逆に、結果を急ぐ問いや、相手を動かそうとする意図は、クライアントに圧力として伝わります。
行動を導くとは、「押す」ことではなく「信じて待つ」ことです。
その静かな信頼が、クライアントの中で芽生えた意志を現実の力に変えます。

次のステップへ:フィードバックとフィードフォワードへ

行動を生み出す対話力は、次の「フィードバック/フィードフォワード」へとつながります。行動の後には、必ず「振り返り」があります。そこで得られる学びと洞察が、次の成長を加速させます。行動を導く問いとは、「人を動かす問い」ではなく、「人の内なる力を信じて引き出す問い」です。


2026年5月末に新刊『問いの力』をリリースします

コーチング思考から始める問いの力 五十嵐久

これまで多くの対話に関わる中で感じてきたことがあります。
「人は『答え』」で変わるのではなく、「問い」によって変わる」
正しい答えを探し続ける限り、思考は過去の延長に留まります。
しかし、本質的な問いに出会った瞬間、人はまったく違う景色を見始めます。
そのプロセスを言語化したのが、今回の新刊『問いの力』です。
この本が、あなた自身の問いを深めるきっかけになれば嬉しいです。


国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久