
「伝える」ではなく、「共に見る」
コーチングの中で「フィードバック」とは、相手を評価したり正したりすることではありません。それは、現実を一緒に見つめ直し、学びを共に発見する対話です。
講座では、相手を変えようとするのではなく、相手が自分を理解し、成長を選択できるよう支援する技法と在り方を学びます。
フィードバックは、過去を振り返る鏡でありながら、同時に未来を拓く光でもあります。
フィードバックの本質 ― 評価から共創へ
ビジネスの現場では「フィードバック=評価」と誤解されがちです。しかし、コーチングにおけるフィードバックは、「共に学ぶための対話」です。コーチは「何が正しいか」ではなく、「何が起こっていたのか」を共に観察し、事実を共有します。
たとえば、
「あなたは最後まで静かに聴いていましたね」
――これは評価ではなく、観察された事実です。
その後に「それはどんな意図があったのでしょう?」と問いかけることで、クライアントは自らの行動を意味づけし、次の行動を主体的に選択できます。
講座では、ICFコア・コンピテンシーC-7(クライアントの気づきを促す)に基づき、
フィードバックを通じてクライアントのメタ認知を高めるプロセスを体験的に学びます。
効果的なフィードバックの3ステップ
1. 観察する
事実・行動・反応を評価を交えずに観察する。
「あなたは、○○という言葉の後に深くうなずいていましたね。」
2. 共有する
その行動を見て自分がどう感じたかを伝える。
「そのうなずきから、あなたの真剣さが伝わってきました。」
3. 気づきを促す
クライアント自身に意味を問い返す。
「あなた自身は、どんな意図でそうしていましたか?」
この3ステップが、対話の安全性を保ちながら、学びを生み出す鍵となります。
フィードバックは「信頼の行為」
相手の成長を信じていなければ、真のフィードバックは成立しません。
だからこそ、フィードバックは「勇気」と「敬意」のバランスが求められます。
CBLアカデミーでは、挑戦的でありながら温かい関わりを実践するためのトレーニングを行います。
「耳が痛い」指摘ではなく、「心に響く」フィードバックです。
その違いは、コーチがどれほど相手を尊重しているかで決まります。
フィードバックを受け取る力
プロフェッショナル・コーチは、与えるだけでなく、自分がフィードバックを受け取る力も養います。講座では、セッション録音や逐語録をもとに、自己レビューとピア・フィードバックを行います。他者の視点を通して自分の癖に気づくことは、最も深い学びの機会です。“受け取る力”があるコーチは、クライアントにとって安心できる存在になります。それは、「自分も成長途上である」という謙虚な在り方に支えられています。
次のステップへ:未来を開くフィードフォワードへ
「フィードバック」は過去を共に見つめ直す学びです。
次の「フィードフォワード」では、それを未来を共に描くプロセスへと進化させます。
フィードバックが「今ここでの理解」を深めるなら、フィードフォワードは「これからの行動」を創り出します。両者の統合が、クライアントの成長を持続的なものにします。
2026年5月30日に新刊『問いの力』がリリースされました
これまで多くの対話に関わる中で感じてきたことがあります。
「人は『答え』」で変わるのではなく、「問い」によって変わる」。
正しい答えを探し続ける限り、思考は過去の延長に留まります。
しかし、本質的な問いに出会った瞬間、人はまったく違う景色を見始めます。
そのプロセスを言語化したのが、今回の新刊『問いの力』です。
この本が、あなた自身の問いを深めるきっかけになれば嬉しいです。
国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC)
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久

