
自分を受け入れたとき、他者との関係が変わる
「人を承認する力」は、他者を理解する力だけでなく、自分を受け入れる力に根ざしています。C4「自己受容と他者承認」は、コーチとしての在り方の深化を目的とした講座であり、人を支えるために、まず自分と和解するという内面的テーマを扱います。他者を完全に受け入れることはできなくても、「受け入れようとする自分を受け入れる」ことはできます。その瞬間に、内なる葛藤が静まり、コーチとしての信頼性と存在感が自然に深まっていきます。
自己受容とは「未完成を認める勇気」
自己受容とは、「自分を好きになること」ではなく、「自分のすべてをそのまま見つめること」です。私たちはしばしば、「完璧であれば価値がある」という思い込みを抱きます。しかし、コーチングにおける自己受容とは、「未完成の自分のままで、すでに十分である」と感じる力のことです。
講座では、自己受容を3段階で探求します。
- 気づく― 自分の感情・反応・思考のパターンを観察する。
- 受け入れる― それらを否定せず、「これが今の自分だ」と認める。
- 統合する ― 長所と短所、光と影を区別せず、一つの自分として抱きしめる。
このプロセスを経ると、コーチはクライアントの未完な部分にも寛容になり、「成長とは不完全さを抱えたまま進むことだ」と理解できるようになります。
他者承認の深まり ― 自己受容が共感を広げる
自己受容が進むほど、他者への承認は自然体になります。
自分の弱さを受け入れられる人は、他者の弱さにも優しくなれます。つまり、自己受容は他者承認の根の部分なのです。
講座では、対話セッションを通じて、「他者の行動を評価するのではなく、その存在の背景を理解する」練習を重ねます。
たとえば、
「あなたの怒りの裏には、何を守りたい想いがありますか?」
という問いを通じて、相手の感情の奥にある尊重すべき意図を見出していきます。
承認とは、相手を変えることではなく、相手が自分を思い出す手助け。そのプロセスを支えるのは、コーチ自身の静かな自己受容なのです。
コーチ自身のリフレクション ― 「私もまた、人間である」
コーチはセッションの中で、クライアントと同じように感情を揺さぶられます。
「私はうまく関われただろうか」「相手に十分寄り添えたのか」――そうした不安や迷いを感じること自体が、コーチとしての誠実さの証です。
CBLコーチング経営アカデミーでは、定期的な自己リフレクション・ワークを行い、自己否定ではなく「成長への感謝」として自分の課題を見つめる練習をします。「うまくいかなかったセッション」もまた、貴重な教師です。そこに成長のヒントを見出すことで、自己受容がより現実的で深いものになります。
自己受容の循環が、チームと社会を変える
自己受容は、個人の内面にとどまりません。コーチが自分を受け入れ、他者を承認する関係性を築くと、その安心感がクライアントのチームや組織にも伝播していきます。
心理的安全性が生まれ、メンバーは互いに認め合い、挑戦を支え合うようになります。
コーチングとは、個人の成長を超え、社会の関係性の質を変える営みです。「自己受容と他者承認」は、その変化の出発点です。
次のステップへ:問いの力へ
「聴く」「受けとめる」「感じる」「認める」力は、次の「問いの力」へとつながります。
傾聴と承認が共感の土台なら、問いは気づきの翼です。自己受容に根ざした問いこそ、クライアントの探索を促します。「人を理解する」ことと「人を信じる」こと、この二つを統合したとき、コーチングは静かな確信を伴う対話へと成熟します。
技術を超えて「人間の尊厳を扱うプロフェッショナル」としての第一歩です。
国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC)
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久
