
「過去」ではなく、「未来」を共に創る
コーチングの目的は、過去の出来事を分析することではなく、未来を可能性の視点から創り出すことにあります。「フィードフォワード」では、行動や経験を振り返る代わりに、「これからどうなりたいか」「次に何を選択したいか」に焦点を当てる、未来志向のコミュニケーションを学びます。
フィードフォワードは、従来のフィードバックに代わる建設的な対話法として注目されています。それは、「何が悪かったか」を問うのではなく、「どうすればもっと良くなるか」を共に考える姿勢です。この思考の転換が、クライアントの自己効力感を高め、行動の継続を支えるのです。
フィードフォワードの本質 ― 未来志向の信頼関係
フィードフォワードは、クライアントの成長を信じるところから始まります。過去を掘り下げるとき、私たちは無意識に「原因」や「問題」を探しがちです。しかし、フィードフォワードは「まだ実現していない未来」を語る行為です。そこには、コーチが「この人は成長し続けられる」という確信を持っている必要があります。
たとえば、
「次に同じ状況が来たら、どんな行動を選びたいですか?」
「その理想の状態に向けて、どんな小さな一歩を踏み出せそうですか?」
これらの問いは、過去を否定せず、未来を共にデザインする対話です。
フィードフォワードとは、相手を修正するのではなく、可能性を開く招待なのです。
フィードフォワードの3ステップ
CBLアカデミーでは、効果的なフィードフォワードを次の3段階で構成します。
1. 未来像を描く
「どんな未来を望んでいますか?」
──未来の理想状態を明確にする。
2. 行動の仮説を立てる
「それを実現するために、できることは何ですか?」
──行動を選択肢として提案し、柔軟に考える。
3. サポートを確認する
「その挑戦を支えてくれるものは何ですか?」
──環境・人・感情的支えを整理し、継続可能性を高める。
この流れを通じて、クライアントは未来を主体的に描き、自己決定的に行動を選ぶことができます。
「できなかった過去」より「これからできる未来」
フィードフォワードは、失敗や反省を責める場ではなく、「成長への可能性」を見つめる場です。過去に起きたことは変えられませんが、未来の行動は常に選び直すことができます。この選び直しの自由をクライアントが感じたとき、真の自己変容が始まります。
たとえば、
「次は、どんな自分でその状況に臨みたいですか?」
という問いを受け取った瞬間、クライアントは過去の延長線上から解き放たれます。
コーチングの力は、まさにこの視点の転換にあります。
コーチに求められるのは「希望の眼差し」
未来を扱う対話では、コーチ自身が希望を失っていてはなりません。コーチの眼差しが明るければ、クライアントもまた未来を信じられます。この希望の共鳴が、フィードフォワードの場の質を決定づけます。
CBLアカデミーでは、コーチ自身が「未来を見る筋力」を養うために、自分の可能性に対してもフィードフォワードを行うワークを実施します。自分への前向きなまなざしが、他者への信頼を生み出すのです。
次のステップへ:視点を変える技法へ
「フィードフォワード」で学んだ未来志向の関わりは、次のC11「タイムライン/ポジションチェンジ」へとつながります。そこでは、過去・現在・未来の時間軸、そして自分と他者の立場を自在に行き来しながら、クライアントが新しい意味を生み出すセッションをデザインしていきます。
フィードフォワードとは、未来を信じて共に歩む姿勢です。
コーチングの本質は、人の可能性を前提に対話を続ける勇気にあります。
C10「フィードフォワード」は、希望を言葉にし、行動を現実に変える――そんな前進する対話の技法を磨く講座です。
2026年5月30日に新刊『問いの力』がリリースされました
これまで多くの対話に関わる中で感じてきたことがあります。
「人は『答え』」で変わるのではなく、「問い」によって変わる」。
正しい答えを探し続ける限り、思考は過去の延長に留まります。
しかし、本質的な問いに出会った瞬間、人はまったく違う景色を見始めます。
そのプロセスを言語化したのが、今回の新刊『問いの力』です。
この本が、あなた自身の問いを深めるきっかけになれば嬉しいです。
国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC)
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久

