
「あなたはここにいていい」と伝える力
コーチングにおいて、「承認」はスキルであると同時に、人間理解の根幹です。
講座では、クライアントの成果や行動だけでなく、存在そのものに価値を見出すための視点と関わり方を学びます。コーチが「あなたはこのままで大丈夫」と静かに伝えるとき、クライアントの中に眠る力が自然に動き始めます。
承認とは、励ますことでも、褒めることでもありません。それは、人が自分らしくあることを支える、深いまなざしなのです。
承認の3つの層
承認には、3つのレベルがあります。
1. 行動(Doing)への承認
クライアントが何かを達成したり、努力したりしたことを具体的に認める。
例:「行動に移されたことが素晴らしいですね」
これはモチベーションを高める力を持ちます。
2. 在り方(Being)への承認
行動の背景にある価値観や意図を理解し、その在り方を尊重する。
例:「その選択には、あなたらしい誠実さを感じますね」
クライアントは「自分であっていい」と感じることで安心します。
3. 存在(Existence)そのものへの承認
結果や言葉を超えて、「あなたがここにいること自体に意味がある」と伝える。
これは、無条件の尊重と受容です。
言葉ではなく、コーチの在り方全体で伝えられるものです。
講座では、この3層を体験的に学び、状況に応じて自然に使い分ける力を育てます。
承認は「光を当てる」行為
人は、自分を見てくれる存在によって、自己認識が変わります。コーチがクライアントの中に“価値”を見つけ出し、そこに光を当てるとき、相手は自己肯定感を取り戻します。
たとえば、挑戦に失敗したクライアントに対して、「その経験から何を学ぼうとしている自分がいるのか」という視点を示すことで、出来事が「挫折」から「成長の証」へと意味づけを変えます。
承認とは、相手の中にすでにある強さ・知恵・美しさを見出すまなざしです。
講座では、「相手の変化を信じる力」を承認の中核として位置づけ、フィードバックやリフレクションの前提となる関係の安全性を築く方法を学びます。
自己承認が他者承認を生む
他者を本当に承認するためには、自分自身を承認できている必要があります。
自分の弱さや未熟さを受け入れられないと、他者の弱さを裁いてしまうからです。
講座では、「自己承認ジャーナル」や「リフレクティブ・ダイアログ」を通じて、自分を責めずに受けとめる練習を行います。
自己承認とは、「完璧ではない自分を、それでも価値ある存在として認める」ことです。
この姿勢が身につくと、コーチの眼差しは柔らかくなり、場全体が安心に包まれます。
承認は、他者を変えるための言葉ではなく、自分が変わるための意識のあり方でもあります。
承認の先に生まれる「自己信頼」
クライアントがコーチからの承認を受け取ったとき、その感覚は次第に「他者からの評価」ではなく「自分自身への信頼」へと変わっていきます。承認の究極の目的は、クライアントが自分を承認できるようになることです。「私は私を信じていい」―その確信が行動を支え、人生を前に進めます。コーチングとは、人を勇気づける技術ではなく、人の内にある力を思い出させるプロセスです。承認の在り方を学ぶことは、コーチが「他者の成長を信じる専門家」として成熟していく道そのものです。
次のステップへ:感情と存在の共鳴へ
存在を受けとめる力は、次の「感情の傾聴と共鳴」へと発展します。感情を聴くことは、相手の生命力に触れることです。承認のまなざしを持つことで、コーチは感情を恐れず、深く共にいられるようになります。
承認とは、「あなたがここにいることが、すでに価値である」と伝えることです。この学びを通して、コーチ自身もまた、人間の美しさと可能性に深く触れる時間を迎えます。
国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC)
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久
