
「聴く」という行為を超えて、「存在で聴く」
コーチングの原点にあるのは、「聴くこと」です。しかし、それは単に相手の言葉を聞き取る技術ではなく、相手の存在をまるごと受けとめる姿勢です。C1「傾聴と承認」では、コーチングの土台となる「聴く力」と「在り方(プレゼンス)」を探求します。この科目は、コーチとしての最初の一歩であると同時に、最も深く続く学びの始まりでもあります。
傾聴とは「相手の世界を感じる」こと
多くの人が“聞く”ことを「理解する」行為だと考えます。しかし、真の傾聴は、言葉の表面ではなくその奥にある感情・価値観・信念に静かに触れる聴き方です。コーチがそのように聴くと、クライアントは安心し、自分の内側の声を自然に語り始めます。
講座では、ICFコア・コンピテンシーC-5「積極的傾聴」を基盤に、
- 内容(何が語られているか)
- 感情(どんな気持ちがそこにあるか)
- 意味(何を大切にしているか)
という三層で聴く力を体験的に身につけます。
また、沈黙・呼吸・非言語のサインを「対話の一部」として受けとめる練習を重ねます。
沈黙は“無”ではなく、“内的変化の音”です。
そこに耳を澄ますとき、傾聴は「技術」から「関係の芸術」へと変わります。
傾聴とプレゼンス ― 「在る」ことで相手を支える
コーチングにおけるプレゼンスとは、その場に完全に存在する力です。評価せず、焦らず、コントロールせず、ただ相手の世界に共にいる。この静かな在り方こそが、傾聴の深さを決めます。講座では、実践を通してプレゼンスを育てます。自分の内側が静まると、相手の微細な変化が自然に感じ取れるようになります。その状態で関わるとき、コーチの存在自体がクライアントの安心と気づきを引き出します。
「聴く」ことは「信じる」こと
本当に聴ける人は、相手を信じている人です。コーチが「クライアントの中に答えがある」と確信しているとき、その信頼感が場全体を包みます。傾聴は情報を集める手段ではなく、相手の可能性を信じる行為です。相手が自分の言葉で世界を理解していくプロセスを、静かに見守る、その時間こそ、コーチングの神髄です。
次のステップへ ― 「承認」へと続く聴き方
「聴く力」と「在る力」は、「承認の理解と実践」へとつながります。傾聴が相手の世界に入る力だとすれば、承認は相手の存在を映す力です。この二つの融合が、信頼に満ちたコーチング関係の基礎となります。コーチとして成長する道のりは、聴く深さがそのまま在り方の深さに比例します。聴くとは、相手の声を聴くことを通じて、自分の静けさに戻ることです。そこから、真のコーチングが始まります。
国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC)
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久
