B8. リフレーミング

リフレーミングとは、フレーム(枠組み)を変えること

人は、出来事そのものではなく、それを「どう意味づけるか」によって行動を決めています。同じ出来事も、見方が変われば意味が変わり、感情も行動も変わります。
B8「リフレーミング」は、この意味の再構築を通してクライアントの可能性を開くコーチングの技法を学ぶ講座です。
リフレーミングとは、フレーム(枠組み)を変えることです。つまり、「見方」「文脈」「前提」を変えることで、現実の捉え方を新しくするプロセスです。コーチングにおけるリフレーミングは、問題を否定するのではなく、そこに隠れた価値や学びを発見する意味の転換です。この力を身につけると、クライアントは自分の思考の檻から解放され、より自由で創造的に人生を選択できるようになります。

リフレーミングの3つの次元

1. 認知のリフレーミング ― 見方を変える

「上司が厳しい」→「自分の成長を期待してくれているのかもしれない」
「部下が意見しない」→「私が意見を言いにくい雰囲気を作っているのかもしれない」
このように、出来事に新しい意味を与えると、心の反応が変わります。
講座では、認知心理学の視点から、思考の歪みに気づき、新たな視点を生み出すための質問法を実践します。
リフレーミングは、ポジティブシンキングではありません。現実を否定せず、そこに別の光を当てる「受容的な転換」の技術です。

2. 感情のリフレーミング ― 感じ方を変える

同じ出来事でも、怒り・悲しみ・焦りなどの感情が浮かぶとき、そこには「何を守りたいか」「何を大切にしているか」という価値観が隠れています。コーチはその感情の背後にある意味を丁寧に探り、感情を敵ではなくメッセージとして扱います。たとえば「焦り」を「前進したいエネルギー」と捉えると、行動に変換されます。講座では、感情をリフレーミングする質問(例:「この感情があなたに伝えたいことは何でしょう?」)を通じて、クライアントが感情と協働できる状態をつくります。

3. コンテクスト(文脈)のリフレーミング ― 文脈を変える

人は、状況を「どんな文脈で見るか」によって現実の意味を変えます。ある出来事が「失敗」になるか「学び」になるかは、どんなストーリーの中に置くかで決まります。
講座では、ナラティブ・アプローチ(物語構築の心理学)などを取り入れ、クライアントの人生のストーリーを新たに編み直す対話を体験します。「私は過去の犠牲者」ではなく、「私は学びを得た挑戦者」という新しい語りが生まれた瞬間、クライアントの世界は変わります。

コーチ自身のリフレーミング

リフレーミングはクライアントのためだけでなく、コーチ自身にとっても欠かせない内的スキルです。セッション中、クライアントが停滞しているように感じたとき、コーチが「変化が起きていない」と判断してしまうと、関係が硬直します。しかし、「今は内面の静かな熟成期なのかもしれない」とリフレーミングできれば、コーチは落ち着きを保ち、クライアントを信じ続けることができます。つまり、リフレーミングとは「他者を変える技術」ではなく、「自分の認識を変え、関係性の可能性を広げる力」なのです。

次のステップへ:思考の枠を超え、全体を俯瞰する

B8「リフレーミング」で学んだ「見方を変える力」は、次のB9「メタ思考」につながります。リフレーミングが視点の転換であるなら、メタ思考は視点の俯瞰です。自分と他者の思考や感情の構造そのものを客観的に眺める力です。リフレーミングの本質は、「現実を変えること」ではなく、「現実との関わり方を変えること」です。
この講座は、コーチが変化の触媒として在るための知恵と柔軟性を育む時間です。物事をどう見るかが変わるとき、世界の見え方そのものが変わります。

国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久