B2. 自己理解と他者理解 ─自分を知るほど、人をそのまま聴けるようになる─

自己理解できた分だけ、他者理解が可能になる

コーチングにおいて「他者を深く理解する力」は欠かせない資質です。
しかし、その前提として見落とされがちなのが自己理解です。
本科目では、「自分を知ること」と「他者を理解すること」の関係を、理論だけでなく体験を通して探究していきます。
ここで言う自己理解とは、「自分をうまく説明できること」ではありません。
むしろ、自分の内側で今、何が起きているのかに気づき続けるプロセス です。
心理学やコーチングの領域には、共通した前提があります。
それは、「自己理解できた分だけ、他者理解が可能になる」という原理です。
人は、自分の内面に触れたことのない領域について、他者の中にもそれを見ることができません。逆に言えば、自分を丁寧に理解するほど、相手を「評価や解釈」を挟まずに聴けるようになります。

自己理解の3つの層

本科目では、自己理解を三つの層で捉えます。

① 行動の層(何をしているか)
② 感情・思考の層(何を感じ、考えているか)
③ 意図・価値観の層(なぜそうするのか)

私たちは普段、①の行動レベルだけを見て自分や他者を判断しがちです。しかし実際には、その下に感情や価値観、恐れといった無意識の層が広がっています。氷山モデルが示すように、見えていない部分こそが、行動を強く方向づけています。自己理解とは、その「見えていない部分を見ようとする勇気」でもあります。
たとえば感情。怒りや不安、悲しみを「良い・悪い」で判断するのではなく、情報として扱います。怒りは境界が侵されたサイン、不安は未来に備えたいサインです。感情はコントロールすべき敵ではなく、自己理解への入口です。

自己理解は成長のための努力ではなく、回復のプロセス

同様に、価値観の探求も重要なテーマとなります。
「なぜ、それを大事にしているのか?」
この問いを自分に向けることで、自分の判断基準が浮かび上がります。価値観に無自覚なままでいると、それを「正しさ」として他者に押し渡してしまうことがあります。コーチにとって、これは極めて重要な気づきです。
本科目が目指すゴールは、自己理解を“深めること”そのものではありません。
自己への態度が、少し優しくなることです。
理解とは評価ではなく、「ありのままの自分を、そのまま見る力」だからです。
感情を避けてしまうコーチ、価値観を押しつけてしまう関わり、自己否定に囚われる姿勢――。
これらはスキル不足ではなく、自己理解の未踏領域が引き起こす自然な反応です。自己理解が一段深まると、関わりは驚くほど変わっていきます。
自己理解は成長のための努力ではなく、回復のプロセス です。
本来の自分を思い出し、そこから他者と向き合うための静かな土台づくり。
B2は、コーチとして、そして一人の人としての在り方を根本から整える講座です。

国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久