A10. 行動促進/コーチングエバリュエーション

気づきを「行動」と「成果」へとつなげる

コーチングの目的は、単なる気づきを得ることではありません。本当の変化は、クライアントが気づきをもとに行動を起こすときに起こります。
A10「行動促進/コーチングエバリュエーション」は、対話の終盤でクライアントが自ら行動を選び、実行し、成果を振り返るための支援プロセスを学ぶ講座です。
この科目は、コーチングの一連の流れ(テーマ設定 → 理想像の明確化 → ギャップの理解)の集大成にあたります。
ここで大切なのは、「やる気を出させる」ことではなく、「自分で行動を選べる感覚(自己効力感)」を育てることです。クライアントが自らの意思で動く力を取り戻すことが、このステップの本質です。

行動促進の3つの原則

1. 小さく、具体的に ― 実行可能性が意欲を生む

行動促進の基本は、「小さく始める」ことです。多くのクライアントは、理想が大きいほど最初の一歩を踏み出しにくくなります。そこでコーチは、「まず何から始めてみたいですか?」「今日できる一歩は何ですか?」といった問いを使い、現実的かつ具体的な行動を共に設計します。講座では、GROWモデルなど、行動計画を構造化するフレームを学びながら、“思考から実行へ”の橋渡しを行うスキルを実践します。

2. 自己決定感を育てる ― コーチが決めず、クライアントが決める

行動を促す際、コーチが「こうするといいですよ」と提案してしまうと、主体性が損なわれます。重要なのは、クライアントが「自分で選んだ」と感じられることです。
講座では、動機づけ理論に基づき、内発的動機づけを高める質問法を学びます。行動を促すとは、コントロールすることではなく、自由を支援することです。コーチが手放すことで、クライアントの内なる意思が動き出します。

3. 行動後の振り返り ― 学びを次のサイクルへ活かす

行動の後に行う「エバリュエーション(評価)」は、成長のサイクルを完成させる重要なステップです。評価とは、成功・失敗を判断することではなく、「そこから何を学んだか」を整理することです。
講座では、リフレクションジャーナルや3Cモデル(Change・Challenge・Choice)を活用して、クライアントが行動の意味を内省し、次のステップを自ら導く方法を探求します。
このプロセスを通じて、クライアントはやって終わりではなく、やって学び、次へ進む力を身につけます。

「行動促進」は行動させることではない

多くの人が「行動促進」と聞くと、行動を起こさせるためのテクニックを想像します。
しかし、CBLコーチングが目指す行動促進は、外からの刺激ではなく、内から湧き上がる動機づけに焦点を当てます。行動とは、「理解」が「納得」に変わった瞬間に自然に生まれるものです。コーチはその内的変化を支える存在であり、行動の責任をクライアントに返すことで、真の成長を後押しします。また、行動促進はクライアントの自律だけでなく、コーチ自身の成熟も促します。「待つこと」「見守ること」「信じること」、それらはすべて行動促進の要素であり、Beingとしてのコーチの在り方を試される瞬間です。
講座では、行動支援の具体的スキルとともに、こうした関わりの質にも焦点を当てます。

次のステップへ:行動の積み重ねを「成長の物語」に変える

A10「行動促進/コーチングエバリュエーション」は、A1〜A9までの学びの実践的統合です。テーマ設定から行動促進までの流れを通じて、「人の変化を支える一連のプロセス」を体系的に理解し、自らのコーチングスタイルを形成していきます。クライアントが自らの行動を通して「変われる」と実感したとき、そこに信頼と自己効力感が生まれます。
この講座は、その変化の瞬間を生み出すための知恵と技術を統合する時間です。コーチングは、気づきで終わらせない。行動を通じて、クライアントの人生に実質的な成果と喜びをもたらす。A10は、プロコーチとしての真価が問われる最初のマイルストーンです。

国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久