
対話の流れに「秩序」と「創造性」を与える
コーチングは自由で創造的な対話ですが、無秩序ではありません。
効果的なセッションには、クライアントの思考と感情が自然に整理され、気づきから行動へと進むための「構造」が存在します。
A5「コーチングの構造」では、その枠組みを理解し、セッションを意図的にデザインする力を養います。この科目の目的は、型にはまった進行を覚えることではなく、構造の意味を理解したうえで、状況に応じて自在に使いこなすこと。つまり、「構造に縛られないために構造を学ぶ」講座です。
コーチングの構造を支える3つのフレーム
1. セッションの流れ ― 意図的な始まりと終わり
セッションには、始まり・展開・終わりという明確な流れがあります。
冒頭では、クライアントのテーマを明確化し、目的とゴールを合意することで、対話の方向性を共有します。
中盤では、クライアントの思考・感情・行動パターンを探求し、新しい視点や意味づけを共に見出していきます。
そして終盤では、得られた気づきを具体的な行動に結びつけ、次のステップへと橋渡しします。
この講座では、ICFコア・コンピテンシーに対応する「セッション・フロー」の設計を学びます。
2. 対話の階層構造 ― 表層から本質へ降りていくプロセス
クライアントが語る内容の背後には、言語化されていない価値観・信念・感情が存在します。優れたコーチは、クライアントの話を時間の線で追うのではなく、深さの層で聴き取ります。構造的アプローチとは、表面的な事象から内的な構造へと降りていくこと。
講座では、「事実→意味→価値観」という対話の階層モデルを用いながら、クライアントの自己理解を促す流れを体得します。
この理解があることで、コーチングの一回一回が「偶然の会話」ではなく「意図された変容のプロセス」へと変わります。
3. マクロ構造とミクロ構造 ― 全体設計と瞬間の構築
コーチングには、単一セッションを超えた「全体の構造(マクロ)」と、1回の対話内の「瞬間的な構造(ミクロ)」があります。
マクロ構造では、一定期間にわたるコーチングプランの設計(テーマ設定→ゴール設定→進捗レビュー→統合)を学びます。
一方でミクロ構造では、セッション中の問いや沈黙、フィードバックの使い方など、一瞬の流れをどのように編み上げるかを探求します。
この両構造を有機的に結びつけることで、クライアントの長期的な成長支援を実現します。
構造は「自由な創造」の土台
コーチングの構造を理解することは、即興性を失うことではありません。むしろ構造があるからこそ、コーチは安心して対話に没頭でき、クライアントも自分の内面を安心して探求できます。音楽家がスケールを習得してから自由に即興演奏をするように、コーチもセッションの構造を身体に刻むことで、流れるような自然な対話が生まれます。
この講座では、型に頼らず、構造を支えとして使いこなす姿勢を身につけます。また、構造を理解することは、セッション後のリフレクションにも役立ちます。「このセッションでは何が起きたのか」「どの段階で気づきが生まれたのか」──それを振り返る力がつくことで、コーチ自身の成長も加速します。
次のステップへ:構造の上に対話を築く
A5「コーチングの構造」で学んだ流れと枠組みは、次のA6「コーチングオリエンテーション/プレコーチング」に直結します。構造を理解したうえで、初回面談や契約前の段階でどのように関係性を整え、期待値を共有するかを具体的に学びます。
コーチングは「自由」と「秩序」のバランスの上に成り立つ実践です。この講座は、その両者を統合するための知的かつ実践的な学びの場です。セッションを流れで終えるのではなく、意味として設計するという、プロコーチへの第一歩を踏み出します。
国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC)
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久
