
「もし今日が人生最後の日だとしたら、私は今からやろうとしていることを本当にしたいだろうか?」
スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で語ったこの問いは、自己基盤というテーマの核心を突いています。私たちは日々、忙しさや役割、期待に追われる中で、自分自身の内なる声とどれだけ対話できているでしょうか。
コーチングが本当に機能するためには、スキル以前に「コーチの在り方」が問われます。CBLでは、コーチのBeingとして、自己理解・自己承認・自己一致を重視しています。
コーチはクライアントに同意したり迎合する存在ではありません。100%クライアントの味方であり続けるためには、揺るがない自己基盤が必要なのです。
自己基盤が整っている人・いない人の違い
自己基盤が整っていないと、成功したときには自慢や慢心に陥り、失敗すると落ち込みや他責に向かいやすくなります。一方、自己基盤が整っている人は、成功を仲間と分かち合い感謝し、失敗からも学び次の一手を考えます。ここにあるのは、能力の差ではなく「内側の安定性」の差です。
CBLでは自己基盤(パーソナル・ファウンデーション)を、
- 自分を理解し、認めている
- 他者との違いを受けとめている
- ありのままの自分をエネルギーに変えられている
- やりたいことに挑戦できている
状態として定義しています。
未完了と妥協がもたらす見えない影響
自己基盤を揺るがす大きな要因が「未完了」と「妥協」です。未完了とは、罪悪感、後悔、怒り、悲しみ、避けている対話など、心の中に残り続けている“おもり”のようなものです。重要なのは、未完了は意志の弱さではなく、大切にしている価値がある証拠だという点です。
未完了が多い状態のままでは、コーチ自身が無意識にクライアントを急がせたり、感情の話題を避けたり、クライアントの未完了に過剰反応してしまうことがあります。だからこそ、コーチ自身が未完了とどう向き合っているかは、極めて重要なのです。
また、妥協も一概に悪ではありません。過去の自分を守るために必要だった可能性もあります。しかし、成長を妨げている妥協に気づかずに続けていると、自己基盤は静かに摩耗していきます。
自己基盤を整えるとは、完璧になることではない
この講座のゴールは、未完了や妥協を「なくす」ことではありません。未完了に対しては、やらないと決める、すぐやる、期限を決めていったん忘れる、という健全な扱い方があります。妥協についても、「それによって何を得ていて、何を失っているのか」を自覚することが第一歩です。
自己基盤を整えるとは、ブレない人間になることではなく、ブレている自分を引き受けながらも、自分軸で選択できる状態になることです。スキルが活きるのは、その土台があってこそです。コーチとして、人として、どこに立っているのか――この問いに向き合うことが、すべての出発点となります。
国際コーチング連盟認定マスターコーチ(MCC)
日本エグゼクティブコーチ協会認定エグゼクティブコーチ
五十嵐 久
